チック、トゥレット症について

チック症はほとんどの場合、幼児期から徐々にあらわれてきます。

最初はひんぱんなまばたきから始まり、年齢があがるにしたがって、

・くびをふる
・目をぐるっとまわす
・口の周りをなめる
・顔をしかめる
・口を不自然にゆがめる


などいろいろな運動チックがつぎつぎに現れ、

・大きな咳ばらいをする
・鼻をふんふん言わせる


などの音声チックも加わるようになっていきます。音声チックが重症化すると、

・アッアッ、エッエッなどの大きな声を発する
・同じ言葉をいつまでもくりかえす
・ばか、死ね、などの汚言が口をついて出てしまう


という、学校や職場にふさわしくない目立つ症状があらわれてきます。

チック症状のつらいところ

症状そのものが本人にとってうっとおしいことに加えて、本人はしたくてしているわけではないのに、どうしてもせずにはいられなくなる、してはいけないと思うとよけいに症状が出やすくなってしまう、まわりからはわざとやっているように思われてしまう、というところでもあります。

小児にこのような症状があらわれても、多くの場合は数か月で消えていきますが、いくつもの運動チックと音声チックが消えていかずに1年以上続くと、チック症が慢性化、重症化したトゥレット症と診断されることになります。

チック症が重症化してトゥレット症になると、症状の重い軽いはあるにしても、一生ものの障害になることがあります。

特に音声チックの症状が重い場合は、学校や職場での適応が難しくなることがあります。

知的にも身体的にも全く問題はないのに、

・周囲から奇異な目でみられて仲間はずれにされる
・いじめをうける
・就職差別をうける


そういうことが重なって生きるのがつらくなっていき、2次障害としてうつ病を発症したりすることも少なくないようです。

チック、トゥレットの発症メカニズムはまだはっきりとは解明されていませんが、脳の中の大脳基底核という部分に生じる機能障害が原因らしいという事が少しづつわかってきています。

遺伝的な要素が強いということも言われていますが、特定の遺伝子がチックを引き起こすというわけではなく、いくつもの遺伝子の組み合わせの結果として発症するのではないかという仮説が立てられています。

チックが出るのは母親の子育てが間違っているせいだという、全く何の根拠もない説が広く一般に信じられていた時代もありました。

今ではそういう考え方は全く否定されており、チックの発症はあくまでも脳の器質異常による機能障害からくるものであるという事が明らかにされつつありますが、いまだに母親のせいだというようなことを口にする年配者や勉強不足の医師もいて、お母さんたちを苦しめることがあります。

チック、トゥレットの子供たちには、運動能力が非常に優れていたり、知能が標準より遥かに高かったり、芸術的な才能に恵まれているなど、普通の子供たちより優れた資質を持った子が多いように思われます。

そして、優しくて人懐こい、正義感が強い、真面目で努力家であるなど、人に好かれる性格であることも多いようです。

一方で、チック、トゥレットには怒り衝動という、情緒を制御しにくくなるという厄介な側面もあり、普段は穏やかで優しい子が、突然切れたりするということもあったりします。

豊かな資質に恵まれているのに、運動チックや音声チックのために、その才能を十分に伸ばしにくくなってしまったり、愛すべきパーソナリティが、怒り衝動のために歪んで見えてしまったりなど、チック、トゥレットの子供たちは、素晴らしいものを持っているのに、人生が生きづらいものになってしまうことが少なからずあります。

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